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二代目が最初にやってはいけないこと

継いで早々に改革へ動き、古参と溝ができる。二代目が一年目でつまずく型と、最初にやるべき「観察と質問」の助走期間…

継いだからには、自分の色を出したい。古いやり方を変えたい。そう思って就任早々に改革へ動き、気づけば古参の社員と溝ができていた——事業を継いだ二代目が、最初の一年でつまずく型は、だいたい決まっています。

いきなりの改革が、信頼を失わせる

先代のやり方には、外から見えない理由があります。非効率に見える手順が、実は特定の取引先との関係を保っていたり、ある社員の得意分野に合わせて組まれていたり。たとえば従業員数十名規模の会社で、二代目が就任初月に「古い商習慣だから」と長年の取引条件を一方的に見直し、主要な仕入先が距離を置いてしまった、という話は珍しくありません。その背景を知らないまま「古いから変える」と動くと、変えられた側は「新しい社長は、うちのことを分かっていない」と受け取ります。正しい改革であっても、順番を間違えると反発だけが残ります。

もう一つ多い失敗が、人事への性急な手つけ

取引条件と並んで多いのが、人の配置に早々と手をつけることです。「この人はもう年だから」「この役職は要らないのでは」——先代の時代からの人員配置を見て、二代目の目にはすぐにでも整理したい無駄が映ります。ですが、その配置には、先代が長年かけて見極めた適材適所や、表には出ない貸し借りの経緯が隠れていることが多いものです。継いで数か月で人を動かすと、動かされた本人だけでなく、周りの社員も「自分もいつか同じ目に遭う」と身構えます。結果として、二代目が最も必要とする協力が先に失われます。取引条件の見直しも人事も、動かす前に「なぜ今の形になっているか」を確かめる。この一手間の有無が、後の展開を大きく分けます。

最初の仕事は「観察」と「質問」

継いで最初にやることは、変えることではなく、知ることです。目安として、最初の半年から一年は、判断を保留してでも社内を見て回る期間に充てる価値があります。

  • なぜこのやり方になっているのか、先代や古参に「教えてください」と聞く。指示ではなく質問から入る。相手を否定しない問い方が、次の協力を引き出します。
  • 数字の裏にある事情を確かめる。粗利の低い商品にも、続けている理由があるかもしれません。切り捨てる前に、まず理由を聞く。
  • 現場に立つ時間を作る。会議室の資料だけでは見えないものが、現場には残っています。
  • 誰が本当のキーパーソンかを見る。役職の高さと、現場での発言力は、必ずしも一致しません。朝礼や休憩時間の会話を観察するだけでも、組織の重心は見えてきます。

あわせて、気づいたことは一冊のノートに書き溜めておくことをすすめます。「なぜこの手順なのか」「この配置は変えられそうか」——疑問と改革の候補を書くだけ書いて、実行はしない。半年後に読み返すと、当初は無駄に見えたものの半分ほどは理由が分かって消え、残ったものが本当に変えるべき課題として浮かび上がってきます。書いた時点の自分と、観察を終えた自分の目の違いが、そのまま成長の記録にもなります。

この期間は、社長としての力を蓄える助走です。急がば回れ、というより、急がないことそのものが最初の一手になります。

先代との距離のとり方

観察期間をうまく使えるかどうかは、先代との関係にも左右されます。先代が会長として残る場合、二代目が質問を重ねる姿は「頼りない」と映るのではなく、多くの場合むしろ安心材料になります。逆に、先代に何も相談せず突っ走る二代目のほうが、先代の目には危なっかしく映ります。分からないことを分からないと言える二代目のほうが、結果として早く任せてもらえる。ここでも、急いで独り立ちしようとする姿勢より、素直に聞く姿勢のほうが、信頼を積む近道になります。

変えるのは、信頼を築いてから

観察と質問を重ねるうちに、「ここは自分が変えるべきだ」という確信が生まれてきます。そのときには、周囲も「あの社長はよく見てから動く人だ」と分かっている。同じ改革でも、信頼が積み重なった後なら、抵抗は驚くほど小さくなります。人はやり方そのものより、誰がどんな態度で変えようとしているかに反応するもの。順番を変えるだけで、二代目の一年目は違うものになります。

焦りの正体は、たいてい「早く認められたい」という気持ちです。継いだばかりの二代目ほど、成果で存在を証明しようとする。けれど社員が見ているのは、目に見える成果よりも、その人が自分たちをどう扱うか。まず信頼という土台を作っておけば、その上に建てるものは後からいくらでも大きくできます。順番を守った二代目ほど、二年目・三年目で大きく動けるのは、この土台があるからです。

なお、株式や代表権をいつ動かすかといった承継の法務・税務面は、専門家の領域です。制度の設計は税理士・弁護士に確認しながら、社長自身は人と組織の承継に力を注ぐ。この分担が現実的です。

継いだ最初の一年は、成果を焦る時期ではなく、土台を確かめる時期。動きたい気持ちを少しだけ後ろに置けるかどうかが、その後の五年を左右します。

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